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​地形測量

​地形測量とは、地形図または平面図(以下「地形図等」)を作成する測量をいい、その方法により一般に平板測量と空中写真測量とに分けられる。

地形図等とは地形(土地の起伏)、地物(人工構造物、自然物)の双方を表現した地図をいう。

地形測量において、地形図等の縮尺が1/1,000以上の場合は平板測量によって1/2,500以下の場合は写真測量によって行うことを標準としているが、地形図等の精度は縮尺によって1/500以上と1/1,000以下とに区分し、次表に掲げるものを標準とする。

<等高線>

等高線の種類は主曲線、計曲線、補助曲線および特殊補助曲線とする。

等高線の間隔は次表に掲げるものを標準とする。

水準測量工程図

各種等高線の用い方は次による。 

 1)主曲線 
 地形を表現するための基本的な等高線として用いる。

 原則として省略しない。 

 2)計曲線 
 等高線の数値を理解しやすくするため、主曲線のうち5本ごとに1本を強調して計曲線とする。 

 3)補助曲線 
 地形を特に詳細に表現する必要がある箇所に用いる。 
 補助曲線の数値は主曲線の数値の1/2とする。 

 4)特殊補助曲線 
 補助曲線を用いる箇所において、地形を更に詳細に表現する必要がある場合に用いる。 
 特殊補助曲線の数値は、補助曲線の数値の1/2とする。 

 


<図式> 


 地形図等の図式は目的および縮尺に応じて適切に定めるものとする。

縮尺が1/1,000以上の地形図の図式は大縮尺地形図図式による。

また、縮尺が1/2,500以下の場合は、原則として国土基本図図式を準用する。 
地図に表現できる長さの最小限界は0.5mmとされている。

この表現の限界および用図目的等を勘案して、図式は1/1,000以上と1/2,500以下に区分している。

1/1,000以上の図式は1/500と1/1,000とに区分し、更に一般図、道路図、河川図による適用区分がある。 

(1)平板測量

 

 平板測量とは一~四等三角点および1~4級基準点を平板図紙上に所定の縮尺で展開し、これを基準にして現地において地物等の位置および形状を測量し、所定の図式に従って直接図示し、使用目的に合った地形図等を作成する作業をいう。

平板測量の精度は、平板図紙上の全ての測定点が、その正しい位置と比較してどれだけ転位しているかによって決められる。

したがって、高精度な成果を要求される大縮尺図を作成する場合は、所要の測量精度が得られるように作業の方法や使用する機器を選定しなければならない。また、平板測量の使用機器には、TSやGPS測量機等を使用することにより、精度および作業効率の向上と共に、図面を数値的に扱うことも可能となった。

 地形測量にTSを用いる方法では、取得した地形、地物等の数値データをもとにコンピュータの図形編集機能を活用して編集を行い、地形図原図を作成する。また、平板とTSを併用して行う方法、TS等を一部の工程(標定点の設置、地形補備測量および現地補測)に使用する方法もある。平板測量は使用機器および作業者の熟練度が地図の精度を大きく左右するため、機器の構造および性能を熟知し、かつ、作業に慣れておくことが必要である。

<平板測量の方法>

1)平板図紙の貼り付け

 平板図紙(厚さ0.125mm以上のポリエステルフィルム等)を平板より少し小さめにカットし、市販されている平板止め金具(クリップ)

で四隅を固定する。

 

2)平板の標定

 平板は作業が容易にできるようにみぞおちくらいの高さに設置し、作業中に平板が動かないよう脚を地面にしっかりと差し込み、次の3つの条件(平板標定の三要素)がともに満足されるように据え付ける。

①致心

 到心とは平板を設置した基準点とそれに対応する平板図紙上に展開された基準点とが、同一鉛直線上にあるようにすることである。

 これは求心器を用いて行う。

②整置

 整置とは設置した平板面を水平にすることであり、通常、アリダードの付属水準器を用いて行う。

③定位

 定位とは平板図紙上に展開された基準点の方向線と現地の基準点の方向線とを平板面上で同一方位になるようにすることである。

 定位に用いる基準点との間隔は、長いほど高精度な成果が得られる。

平板測量工程図

1)平板測量の計画

①計画の基本条件

計画段階では、まず、測量の目的を考慮し、合理的かつ能率的に作業を行うために必要な各工程における基本方針を定め、基本設計を行う。

計画の基本条件として、測量区域(面積や地区の形状)、精度、地図に表現すべき内容、地図を必要とする時期、経費等の条件を総合的に判断、調整し、地形図の縮尺、精度、等高線の間隔、基準点密度、使用器材、納期等を決定する。

 

②基準点の配点計画

細部測量の基準となる基準点の配点計画については、細部測量を実施する際に効率的であるか否かを検討し、1/2,500地形図(都市計画図等)上で行うことが望ましい。

この時、できるだけ最新の大縮尺の写真を入手し、現地の地形、地物を考慮して、後続作業を効率的に進められる図上計画を立案する

ことが大切である。

 

 

2)図郭線、縦横線及び基準点の展開


図郭線、縦横線および基準点を平板図紙上に展開する方法として、展開機による方法と図解による方法とがある。現在ではほとんど展開機を用いているが、展開機にも精密な座標展開機や自動製図機から図解法に近い程度のものまである。
方法はいずれでもよいが、精度の骨格をなすものなので特に慎重に行わなければならない。

また、図郭付近の精度を保持するため、図郭外の基準点も展開しておくことが重要である。
図郭線および縦横線の太さは0.1mm±0.01mm以内、また図郭の四隅、縦横線の交点及び基準点の展開精度は、図上0.2mm以内でなければならない。


3)細部測量

細部測量とは地形、地物の全てを細部にわたって図化するために行う測量で、その方法には交会法、道線法、放射法、支距法等がある。
これらの内いずれの方法を用いるかは、地形および地物の状況によって異なる。
大縮尺図の測量では精度を勘案して放射法で行う。
基準点に平板またはTSを整置して測量するが、現地の地形、地物の状況により、基準点のみで測量できない場合は、平板点またはTS点を設けて、細部測量を行うことができる。

この場合、1次まで認められており、2次、3次の平板点およびTS点は認められていない。


4)平板原図の編集

 

 平板測量は現地を観察しながら測定描画するが、現地で必ずしも図式化する必要のないものを除いて現地において図式化し、現地との相違を生じないように留意する。

測定描画した測量結果はその日の内に整理し、順次作業を進める。

これと併行して調査しなければならないものとして、居住地名、地物名などの調査作業がある。

これらは、現地作業中(現場)および関係官公署で調査確認し、平板図上に順次整理しておく。

現地作業終了後、定められた図式に基づいて鉛筆仕上げを行う。

この場合、画線の太さや濃度が均一になるように心掛ける。

居住地名、地物名などの説明文字は、後続の製図作業時に疑問が残らないように表示しておく。

最後に整飾事項を記入して地形図原図の作成工程に移る。

 

 

5)地形図原図の作成


①製図
鉛筆仕上げの平板原図に厚さ0.1mm(400番)以上のポリエステルフィルムを載せて着墨し、地形図原図を作成する。
着墨の順序は、まず図郭内の建物、その他の注記(写植のストリップフィルムを貼ってもよい。)および記号を描画し、次に水涯線、鉄道、家屋、構囲、植生界、植生記号、行政界、その他の境界などの諸地物を描いた後に、変形地、等高線を描画する。図郭内が終われば、最後に図郭外の整飾を描示地形図原図を完成する。


②点検
地形図原図の点検は、平板原図との相違(誤記、脱落、ずれ 等)、図式の誤り(線号の太さ、かすれ 等)及び接合の適否について行う。
各種収集資料との矛盾、記号の適否および注記位置の適否についても、平板原図作成時と同様に再点検することが望ましい。

​工程別作業区分および順序は、次のとおりとする。

測量区域の特徴または作業効率等により、平板を用いる方法による地形測量およびTS等を用いる方法による地形測量の各工程を併用して実施することが出来る。


<作業計画>
作業計画は地域の状況等を考慮し、平板を用いる方法、TS等を用いる方法、又はこれらの併用法のいずれによるかを決定し、立案する。
平板とTS等を併用する方法では、作業地域の基準点設置および視通状況等によって機器の特性を勘案し、道路等の骨格地物をTS等で測定した後、そのデータを平板図紙に表示し、これを用いて平板測量を行うもので、地図作成のためのTS等の利用として最も簡便な方法である。


<基準点の設置>

基準点の設置とは、細部測量に必要な基準点を設置する作業をいう。

基準点の配点密度は既知点を含め次表を標準とする。

ただし、長狭な地域については延長と幅を考慮して配点密度を定める。

またTS等を用いる地形測量において、現地の視通が良好な場合は、配点密度を標準より下げることができる。

<基準点等の展開>

基準点等の展開とは、基準点および図郭線等をその座標値により平板図紙に表示する作業をいう。

基準点等の展開は座標展開機、自動製図機を使用することにより、図上0.1mm以内の高精度で展開できる。

平板図紙に基準直角縦横線を区画する方法とは、縦横線座標展開機を使用し、基準直角縦横線を引き、これをもとにして定規で基準点を展開する方法である。

平板図紙の大きさは特に定めていないが、利用しやすい標準的な縦横の比が3:4であること、及び、使いやすさを勘案して30cm×40cmが一般的である。

 

 

<細部測量>

1)平板を用いる方法による細部測量

平板測量による細部測量とは写真測量と異なり、現地において地形、地物等を直接測定して一定の縮尺に縮図し、所定の図式に従って図示

するものである。

地物の位置または地形の相互関係を正確に表現するには、平板を整置する位置の精度が重要であるため、平板は基準点または平板点に整地

するように規定されている。

地物等の水平位置は、放射法、支距法等により測定図示するものとする。

この場合、距離の測定は直接測定によるものとする。

地物等を測定する方向線長は図上10cm以内とし、測定誤差は図上0.3mm以内(標準偏差)でなければならない。

また、支距法による地物の測定において、準拠線に対する支距は5m以内とする。

地形は標高点および等高線を放射法、支距法等により、測定図示するものとする。

標高点の密度は図上4cm平方について1点を標準とし、標高点数値はcm単位で表示する。

 

2)TSを用いる方法による細部測量

 

TSを用いる方法による細部測量とは、基準点またはTS等を用いて求めた点にTSを整置し、地形、地物等を測定して地形図等の作成に必要な数値データを取得する作業をいう。

TSを用いる方法による細部測量は、次のいずれかの方法によるものとする。

①オンライン方式

オンライン方式とは、携帯型パソコンの図形処理機能を用いて、図形表示しながら測定および編集までを現地で直接行うものをいう。

②オフライン方式

オフライン方式とは、現地でデータ取得のみを行い、その後 取り込んだデータコレクタ内のデータを図形編集装置に入力し、図形処理するものをいう。

数値データ編集後に必要部分の補備測量を現地において行うものとする。

 

 

<編集>

平板を用いる方法による地形測量における編集とは、細部測量の結果を図式に従って正描し、平板原図を作成する作業をいう。

TS等を用いる方法の場合は、測定位置確認資料を参考にして、細部測量で得られた地形、地物等の数値地図データの編集を行い、編集済データを作成する作業をいう。

 

1)平板を用いる方法による地形測量における編集は、次のとおりとする。

 

①平板原図は鉛筆仕上げとする。

②接合部において図形の水平位置の較差が図上0.3mm以内である場合、および等高線間隔の1/3以内である場合は、その平均位置を決定位置とする。

 

2)TS等を用いる方法による地形測量における編集は、次のとおりとする。

 

①地形、地物等の編集は取得した数値地図データを図形編集装置に入力し、図形編集機能を用いて行う。

②編集した図形の点検は、図形編集装置の画面上または自動製図機による出力図で行う。

③平板を用いて地形・地物を測定描画した場合は、ディジタイザ等を用いて数値化し、図形編集装置へ入力する。

 

<地形図原図作成>

 

平板を用いる地形測量における地形図原図作成とは、平板原図を用いて地形図原図および複製用ポジ原図(以下「地形図原図等」という)

を作成する作業をいう。

TS等を用いる地形測量における地形図原図作成とは、作成された編集済データを用いて、所定の図式に従い地形図原図等を作成する作業をいう。

地形図原図の作成について、平板を用いる場合は所定の図式に従い、平板原図に描かれた各種表現事項を透写製図して行うものとする。

また、TS等を用いる場合は、編集済データをもとに自動製図機で作成するか、あるいは出力図を透写製図して作成する。

地形図原図等の点検は、原図の誤記および脱落並びに図式の誤りの有無、画線の着墨の良否等について行うものとする。

 

<成果等の整理>

 

 成果等は次のとおりとする。

 1)地形図原図

 

 2)複製用ポジ原図(第二原図)

 3)精度管理表

 4)その他の資料

(2)空中写真測量

 

空中写真測量は、航空機から撮影された空中写真を用いて写真上に写された土地の形状および地物等を計測し、地形図等を作成する作業で

ある。

空中写真測量が拠り所としている基本原理は「写真上の像点と、これに対応する地上の点および投影中心と呼ばれる点の3点は一直線上にある」というもので、これを共線条件と呼んでいる。

この原理はピンホールカメラで考えれば明らかなように、針穴に対応する投影中心を通る直線(光線)によって、地上点と写真像点とが対応するという幾何学的条件である。

​ピンホールカメラの原理

航空カメラで撮影された空中写真は計測を目的としているため、日常用いられる35mmカメラで撮影された写真とは、いくつかの点で異なっている。
まず、フィルムは通常23cm×23cmの大きさであり、四隅または各辺の中央に指標と呼ばれるマークがある。

この指標は、投影中心と写真上の点との位置関係を確定するためのもので、撮影時に同時に写し込まれる。
また、圧定板がフィルムを吸引圧定することによりフィルムの平面性を保持し、レンズ中心からフィルム面までの距離(画面距離)を一定に保たせている。

このように航空カメラはその幾何光学的性質をできるだけ一定に保つように配慮されており、またレンズ系の幾何光学的性質も共線条件をできるだけ厳密に成り立つように設計されている。

1)空中写真測量の利点と欠点

空中写真測量の長所は、
 ①地図の全面にわたってほぼ均一な精度が得られる。
 ②現地で必要な基準点の数が少なくてすむ。
 ③立入困難な地区でも測量が可能である。
 ④地上測量に比べ経費が少なくてすむ。
 ⑤写真の撮影は短時間で行えるため、地図作成範囲全域をほぼ同じ時点の地図として作成できる。

以上、広い範囲にわたって早く地図を作成したい場合、あるいは種々の条件により現地で実測を行うことが困難な場合、特に有効である。

空中写真測量の短所は、
 ①空中写真に写らない部分については、そのままでは測量が不可能である。
 ②写真の解像度より小さいものについては測定できない。

例えば、建物等の屋根の大きさは測定できるが、屋根に隠された壁の位置(本体)は測定できない。
また、樹木の密生した山林のように地表面が写真に写らない場合は、地表面の標高を樹冠の標高から推定せざるを得ないため、その精度は低いものとなる。

2)空中三角測量に使用される機器

空中三角測量では、点刻器でポジフィルム上に測定すべきポイントをマークし、解析図化機またはコンパレータを使用してマークされたポ

イントを正確に測定する。

測定値はコンピュータで計算処理される。

①点刻器
点刻器はセットされたポジフィルムの表面を金属ドリルや熱針等で削り取る方法で、所定の位置に正確な小点を印すものである。

②解析図化機
解析図化機はカメラの内部定位や実体模像等すべての測定諸元がコンピュータの内部にディジタル形成され、作業者は実体模像を観測する

だけで地図を描画できる。

例えば、アナログ図化機では実体模像を作るための相互標定、実体模像を地上と対応させるための絶対標定(対空標定)を作業者が行うが、解析図化機ではオペレーターは実体測定をするだけで、あとはすべて計算機で自動処理されるものである。
さらに、座標測定機能と計算機能の両方を備えているため、空中三角測量は主に解析図化機により実施されている。

③コンパレータ
コンパレータはポジフィルム上の測定すべきポイントを機械に内蔵されたスケールを用いて、その相対位置を精密に測定するものである。
一対の写真の相対する点(X1,Y1)、(X2,Y2)の座標4個を測定するステレオコンパレータと一枚の写真のみを用いて(X,Y)の2個の座標だけを測定するモノコンパレータがある。

写真測量における施工管理

1)作業計画

 作業計画は工程別に作成するものとする。地図作成工程は一般にバーチャート的に示されることが多いが、実際には同時期に実施できるものおよび複数の前工程に従属しているもの等があり、かなり複雑である。

したがって、作業計画は次の点に留意して慎重に立案する。

①航空機、航空カメラ、図化機等の主要機器および技術者の編成と投入時期のほか、撮影時が天候に左右される点を加味して適切な作業工

程表を作成する。
②各工程での精度管理を的確に実施するため、各工程の責任者あるいは全体の精度管理の責任者を決める。
③地図縮尺と写真縮尺、空中三角測量の方法と標定点の位置、標定点の位置と対空標識の位置等のように標定点の位置から図化までは密接

な関係にあるため、これらの相互関係を考えて細部計画を立てる。

 


2)標定点の設置

標定点の設置とは、既設点のほかに空中三角測量および図化において空中写真の標定に必要な基準点または水準点(以下「標定点」という)を設置する作業をいう。
空中写真測量により地図を作成するためには、写真上の位置と地上の位置とを正確に対応付けなければならない。

これを空中写真の標定というが、この標定を行うためには、あらかじめ水平位置および標高の明らかな地上の基準点および水準点が必要である。

これらの点を標定点と呼んでいる。

この標定点には既設の基準点や水準点を極力利用するように努める。

不足する場合には、新たに測量を行って標定点を設置しなければならない。
標定点の精度は地形図等の縮尺に応じて次表のとおりとする。

3)対空標識の設置

対空標識とは空中三角測量および図化において、基準点、水準点、標定点等(以下「基準点等」という)の写真座標を測定するため、基準 点等に標識を設置する作業をいう。
基準点等の位置を空中写真上で容易に識別し、正確に測定するためには空中写真撮影の前に、基準点等またはその近くの適当な場所に標識 を設置する必要がある。この標識を対空標識という。
対空標識は引き伸ばし空中写真上で確認できるように、空中写真の縮尺等を考慮し、大きさ・形状・色等を選定し、撮影作業が完了するまで保存できるような材料を使用して設置するものとする。

なお、撮影作業完了後は速やかに撤収する。

対空標識を基準点等の近くに設置(偏心)した場合は、その偏心要素を現地で測定し、偏心点の座標を求めておくことが必要である。
対空標識はA型からE型まで5種類の形が定められている。

①A型

三枚羽根とも呼ばれ、基本型の一つである。この形はB型と比較してハレーションによって写真上の形が崩れることを防ぐとともに、基準

点の標石が他の測量の支障とならない等の利点がある。

②B型

正方形の対空標識でA型と同様に基本型の一つとなっている。

この型式はA型と比較して設置の手間が省けるが、三角点、水準点等標石のある基準点の上に設置した場合、その点を他の測量には使用できなくなることから、偏心して対空標識を設置する場合に多く用いる。

③C型

四枚羽根とも呼ばれるが、効果はA型とほぼ同様である。

④D型

コンクリート上のように他の型式で設置することができない場合に限って、ペンキで直接描くものである。

⑤E型

森林の中等で他に適当な場所がない場合に、樹上等に設置するものである。

この型式は空中三角測量等での高さの測定精度が落ちるため、できるだけ避けることが望ましい。

4)撮影

撮影は、測量用空中写真を撮影する工程である。撮影に当たっては、まず地図の目的、縮尺、所要精度、基準点の配置、機器の性能等を考慮し、使用するカメラ、撮影高度、撮影コース、写真の重複度等の適切な計画を立てなければならない。
計画飛行コースは、原則として東西方向にとり、同一コース内の写真の重複度(オーバーラップ)は60%、コースとコースの間の重複(サイドラップ)は30%となるようにするのが標準である。
実際の撮影は雲がなく、太陽高度の高い時に行い、計画したコースや撮影高度を保持するよう、また、横風による飛行機の流れでできるコースのずれを調整するとともに、カメラの傾きも一定の範囲内に収め、カメラ軸をできるだけ鉛直方向に向けて撮影する。

撮影が終了した後は速やかにフィルムを現像し、点検を行って再撮影の要否を判定する。

このフィルムは写真測量の出発点となるため慎重に取り扱わなければならない。
空中写真の撮影縮尺と図化縮尺との比は、次表に掲げるものを標準とする。

①航空機の性能
  ・撮影に必要な装備をし、所定の高度で安定飛行を行えること。
  ・撮影時の飛行姿勢、航空カメラの水平規正および偏流修正角度のいずれにも妨げられることなく、常に写角が完全に確保されているこ

   と。

 ②航空カメラの性能
  ・航空カメラは広角航空カメラであること。ただし、撮影区域の地形その他の状況により、普通角、または長焦点航空カメラを用いるこ

   とができる。
  ・航空カメラは、撮影に使用するフィルターと組合せた画面距離および歪曲収差の検定値が0.01mm単位まで明確なもの。
  ・カラー空中写真撮影に使用する航空カメラは色収差が補正されたもの。

 ③フィルムの性能
  ・写真処理による伸縮率の異方性が0.01%以下であること。
  ・伸縮率の異方性および不規則伸縮率は相対湿度1%について0.001%以下であること。
  ・フィルムの感色性は特に指定された場合を除き、全整色性であること。

 


 5)刺針

 刺針は空中写真上で対空標識が確認できない場合に、基準点等の位置またはこれに代わるべき明瞭な対象を空中写真上で確認し、その位置

 に針で小さな穴をあける作業である。
 刺針は基準点の近くで空中写真上に明瞭に写っている点を選び、現地で引き伸ばし空中写真を用いて、その点を実体視により確認して実施

 する。
 その偏心の方法は対空標識の設置の場合と同様である。
 刺針は、高度な写真判読の技術を必要とするとともに、対空標識の場合と比較して精度が劣り、誤りも多くなる。刺針作業が必要とならな

 いように、対空標識はバックグラウンドが良好な位置に確実に設置し、天候障害等により設置から撮影までの期間が長くなってしまった場 

 合は、なるべく撮影直前に対空標識の状況確認をすることが望ましい。
 ①刺針の許容誤差は4倍以上の引き伸ばし空中写真で0.2mm以内とする。
 ②刺針は現地において引き伸ばし空中写真を実体視して、周囲の明瞭な地物との関係を確かめ、誤りの無い事を確認して行い、かつ、刺針

 後にも実体視によって誤りの有無を点検する。

 


 6)現地調査

 現地調査は、後続の図化および編集に必要な表現事項や名称等を現地で調査確認する作業である。

 調査対象となるものは、道路、鉄道、植生、河川等の人工物や自然物および境界、地名等であるが、これらのうち多くのものは、図化の際

 に空中写真から読み取ることが出来る。

 したがって、現地調査の前には空中写真判読により予察を行い、確実に判読できるもの、不確実なもの、判読できないもの、に分類し、整

 理しておくことが重要である。
 現地では作成する地図と同縮尺に引き伸ばした空中写真を用いて、予察に基づき不確実なもの及び判読不能であったものについて調査、確

 認を行い、その結果を空中写真上に記入整理する。
 現地調査は空中写真と地図の仲立ちとして、膨大な情報の中から作成する地形図に表現すべき事項のうち、空中写真だけでは確認できない 

 事項について、調査・整理する作業となる。
 以上のように、現地調査において完成図に合った取捨選択を行うためには、使用する空中写真の縮尺を図化縮尺とほぼ同一とすることが望

 ましい。

 


 7)空中三角測量

 空中三角測量は、図化に必要な標定用基準点の水平位置と標高を解析図化機、コンパレータ等により求める作業で、測定の方法、計算の方

 法により、種々の方法がある。
 測定の方法による分類のうち、半解析法は開発途上国等で広く行われている方法であり、日本国内ではほとんど行われていない。

 また、機械法は従来最も一般的な方法として広く行われていたが、電子計算機の普及と計算コストの低減化により現在ではほとんど行われ

 なくなった。

 このような背景から、解析法では複雑な計算プログラムを必要とし、計算量も膨大となるが、測定に要する時間は大幅に短縮できる。
 計算の方法による分類では、電子計算機の発展により大量データの同時平均計算が比較的容易にできるようになったため、従来は研究的に

 行われていた独立モデル法やバンドル法が実作業でも使われている。

 独立モデル法やバンドル法は計算量が多くなり、ソフトウェアが複雑なために技術費等の計算機関連費用が高くなるが、逆に必要な標定点

 等の数が少なくて済むため、標定点設置、対空標識設置、刺針等の現場作業に関連する費用が軽減される。

 また、コース単位の調整とブロック単位の調整についても計算機関連費用は高くなるが、現地作業に関する費用は軽減される。
 空中写真は2枚の写真で実体視が出来るように、互いに重複させながら一直線上に撮影される。このようにして撮影された地域をコースと呼

 ぶ。

 対象地域が広くて1つのコースで覆えないときは複数のコースに分けて撮影するが、隣接コース間にも重複が必要である。

 1つのコースだけで空中三角測量を行う場合を単コース調整といい、複数のコースについて同時に空中三角測量を行う場合をブロック調整と

 いう。
 ブロック調整の場合には調整の単位としてコース、モデル及び写真が考えられ、それぞれ多項式法、独立モデル法、バンドル法により行

 う。

 バンドルとは光束という意味で、写真上の点とレンズの中心を通る光線を指している。

 なお、バンドル法についてはセルフキャリブレーション項を付加して系統誤差を補正する精度の良い方法と、この補正を行わない方法とが

 ある。
 対象地域が複数のコースで撮影されているときは、それぞれのコースで単コース調整を行う方法は採らず、全体をブロック調整することが

 多い。

 これは、必要な基準点数が少なくて済み、それぞれのコースが同程度の精度で調整されるからである。

 


 8)図化

 図化とは、空中三角測量および現地踏査等の結果に基づき、各種表現事項を図化機により測定描画し、図化素図を作成する作業をいう。
 約60%の重複度で撮影された連続する2枚の空中写真の撮影時における空間的位置関係を再現(標定)して地上の縮小模像を作り、それを測 

 定・描画する装置が図化機である。

 描画する図の縮尺を図化縮尺といい、図化機により図化縮尺で作成される図が図化素図である。
 標定は、主点距離と写真の指標を図化機に正しくセットする内部標定、2枚の写真の撮影時における相対的な位置と傾きを再現してモデルを 

 作成する相互標定、モデルの縮尺、傾き、平行移動を調整する対地標定の順序で行う。

 使用する図化機は2級A、又はこれと同等以上のものとする。

 所要の精度を確認するため、作業着手前に点検調整を行わなければならない

 ただし、解析図化機の場合は、保有する自己点検機能により点検する。
 点検調整に使用する格子板は各図化機に付属の格子板とし、格子の不明瞭なもの、板面に損傷のあるもの等は使用してはならない。

 


 9)地形補備測量

 地形補備測量は空中写真測量で縮尺1/1,000以上の大縮尺図を作成する場合で、かつ、ダムサイト部分や市街地の区画整理部分、高さの精度 

 を要する部分または樹木の密生地、空中写真測量では標高の精度が劣る部分について、計画機関が必要と認めた場合に行う。
 地形補備測量は図化作業の補完である。

 したがって編集作業前に行い、現地補測の成果と区別する。

 また、作業地域の一部分について行うものであり、地域全体で高精度の地図を必要とするときは、平板測量、あるいは縮尺の大きい空中写

 真測量によるものとし、地形補備測量を行わない計画にした方が効率的である。


 10)編集

 編集作業では、図化素図と現地調査結果に基づいて、各種表現事項を図式に定められた画線の太さ、記号の大きさで描画する。

 さらに縮尺に応じて取捨選択、総合描示、転位等を行い、地形図原図に描画される事項を整理した成果を「編集素図」と呼ぶ。
 描画は、原則として次の順序で行う。

 ①基準点(水準点は骨格地物の描画時)
 ②骨格地物(河川、水涯線、鉄道、道路)
 ③建物、諸記号(建物記号、目標物記号、場地記号)
 ④地形(変形地、等高線)
 ⑤境界
 ⑥土地利用界、植生記号


 11)現地補測

 現地補測とは、編集素図に表現されている重要な事項の確認および必要部分の補備測量を現地において行う作業をいう。
 現地補測作業は大別して次の二点について現地で調査・測量を行い、その結果を編集素図等に整理する。
 ①編集素図に表現されている重要な事項で再確認が必要なもの(注記・境界等)
 ②現地において補備測量の必要なもの(空中写真撮影後の経年変化事項、空中写真により図化判読が困難な事項)
 現地補測は基準点等または編集素図上で明瞭な点に基づいて、平板またはTSを用いて行うものとする。

 現地調査時に樹木の下等で空中写真で判読困難なため簡単な測定によって挿入した地物については、再点検する。
 現地調査時に調査した行政区域、大字界、注記等についても細部にわたって再確認を行い、点検および確認漏れのないようにする。


 12)地形図原図作成

 地形図原図作成とは、編集素図を用いて地形図原図および複写用ポジ原図(第二原図)を作成する作業をいう。
 地形図原図は編集素図を基に伸縮の少ないポリエステルベースに透写製図して作成され、第二原図作成に使用されるほか、原図として、修    

 正測量に使用されるまで良好な状態で保管する。
 複製用ポジ原図(第二原図)は、地形図原図を写真処理して作られ、それぞれの目的に応じて計画線や土地利用規制区分等を補入し、複数

 部作成して各部署で利用したり、一般交付用(藍焼図)の原版として使用される。

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