測量・設計・補償コンサルタント
水準測量
高さを求めるための高低差を観測する方法は、2地点間の高低差をレベルと標尺を用いて、直接観測する「直接水準測量」と2地点間の高低差をTS等を用いて角度と距離を観測し、間接的に求める「間接水準測量」がある。
日本水準原点は同海面上24.140mの高さにあって、我が国における基本測量および公共測量における全国共通の標高となる点である。
我が国では明治6年から明治12年の間、東京湾で行われた験潮結果に基づいて東京湾平均海面の高さが決められた。
高さを表すための基準となる面はジオイド面である。
ジオイド面を厳密に求めることはほとんど不可能であるため、海面の長期観測(験潮)によって平均海面の位置を定め、これをジオイド面と見なして高さの基準としている。水準測量は既知点の種類、既知点間の路線長、観測の精度等に応じて、1級水準測量、2級水準測量、3級水準測量、4級水準測量および簡易水準測量に区分する。
水準測量とは、既知点に基づき、新点である水準点の標高を定める作業をいう。
水準測量工程図
測量の目的に応じて行う各級の水準測量は次のとおりである。
1)1級水準測量
・地盤変動調査
・トンネルの施工
・ダムの施工
以上、特に高精度を必要とする場合に実施する。
2)2級水準測量
・比較的変動量の大きい地盤変動調査
・河川測量における水準基標測量
3)3級水準測量
・路線測量における平地部の仮BM設置測量
・河川測量における平地部の定期縦断測量
4)4級水準測量
・路線測量における山地部の仮BM設置測量
・路線測量における平地部の縦断測量
・路線測量のうち、詳細測量における平地部の横断測量
・河川測量における山地部の定期縦断測量
5)簡易水準測量
・路線測量における山地部の縦断測量
・路線測量のうち、詳細測量における山地部の横断測量
・空中写真測量における標定点測量
・現地で等高線または標高点を補備する地形補備測量
(1)作業計画
作業計画は、作業規定、仕様書、特記仕様書を基に、地形図、既知点の配点図を参考にして、水準測量の目的に従って新点の概略位置を決
定し、平均計画図および作業計画書の作成を行うことである。
作業計画書の作成にあたっては、作業の工程、人員編成、使用機器、作業期間等を決定し、作業規定、仕様書に基づいて誤りのないよう行
うことは勿論であるが、使用する既知点に関する最新の情報として基本測量と公共測量の成果および前回の観測結果等について漏れのない
ように収集する。
(2)選点
選点とは、平均計画図に基づき現地において既知点の現況および水準路線を調査するとともに、新点の位置を選定し、選点図および平均図
を作成する作業をいう。
1)既知点の現況調査
既知点の現況調査は、異常の有無等を調査し、基準点現況調査報告書を作成する。
2)新点の選定
新点は、後続作業における利用等を考慮し、以下の点に注意して最も適切な位置に選定するものとする。
・道路の路線変更、改良、新設等の計画について関係機関に照会し、作業完了後に移設等が生じない位置に選定する。
・交通量の多い道路上は努めて避けること。
・泥湿地、地盤軟弱地、河岸、堤防、局地的な地盤沈下等が生ずるおそれのある場所は避けること。
・水準点を利用する際に発見が容易な場所であること。
・埋設および観測作業が容易な場所であること。
以上 新点は本規程に示すような事項を検討しながら最も適した位置に選定しなければならない。
利用面、標識の保全等を考慮すると公共用地内に設置することが望ましい。
3)建標承諾書の取得
計画機関が所有権又は管理権を有する土地以外の土地に永久標識を設置しようとするときは、当該土地の所有者または管理者から建標承諾
書を取得しなければならない。
4)選点図および平均図の作成
①選点図の作成
・平均計画図および既知点の現況調査結果に基づいて現地調査を行う。
・配点密度ができるだけ均等になるように配慮する。
・既知点、新点位置、水準点番号、路線を地形図上に記載する。
・選点図の余白には選点年次、選点者名を記載する。
②平均図の作成
・選点図に基づいて本規定に定められている諸条件が適合しているか否かを検討し、効率的な作業方法を選び平均図を作成する。
平均図は監督職員の承諾を受ける。
・平均図の良否は後続作業に及ぼす影響が大きいので、十分検討する必要がある。
・当該水準測量地区全体の水準路線網、平均方法および〔往〕観測の方向を示す矢印を記載する。
(3)測量標の設置
測量標の設置とは、新点の位置に永久標識を設置し、測量標設置位置通知書を作成するものとする。
新点は将来にわたって繰り返し利用されることを考慮し、所定の規格および方法により永久標識を堅固に設置する。
設置の際には、次の事項について注意する。
1)工事は必ず敷地の所有者または管理者の承諾を得てから行う。
2)基礎部にコンクリートを用いて埋設する場合には、十分に突き固めて行う。なお、掘削に関しては、埋め戻しを極力避けるように努め
る。
3)止むを得ず盛土部やその他地盤の軟弱な場所に設置するときは、割栗石等を入れて十分に突き固め沈下防止の処置を行う。
4)工事は通行の妨害または危険のないように配慮し、地下埋設物(水道・ガス等)に損傷を与えないように行う。
5)金属標は水準点と書かれた文字が道路に正対するようにし、上面を水平にして設置する。なお、施工管理として設置状況、設置完了状
態および周辺全景を写真撮影する。
以上 設置した永久標識について点の記の作成を行う。
点の記には、永久標識の所在地、地目、所有者または管理者、順路およびその付近の詳細なスケッチその他将来の作業に参考となる事項を
記載することによって、水準点利用時における案内図として、また保守管理上の重要な資料となる。
このため、多少の経年変化が生じていても容易に発見できるように詳細で正確に、かつ、分かり易く作成することが重要である。
(4)観測
観測とは、平均図に基づき、レベルおよび標尺等を用いて関係点間の高低差を観測する作業をいう。
使用する機器は、次表に掲げるもの又はこれらと同等以上のもの。
レベルは、気泡管レベル、自動レベル及び電子レベルの3つに分類される。
1)気泡管レベル
気泡管レベルの構造は、視準線の水平調整を気泡管水準器(気泡管)を用いて行う。
レベルの性能は、気泡管水準器感度(気泡管感度)と最小読定値により定められている。
高精度用の気泡管レベルでは、気泡合致式気泡管が用いられている。
レベルの整置をプリズムを利用して気泡管の両端の映像を合致させる構造になっており、視準線の水平度が直続式に比べ2倍の精度で観測
できる。
平行平面ガラス・マイクロメータとは、対物レンズの前面に平行平面のガラスを備えて 読み取り精度を高めたものである。
平行平面ガラスを前後に傾けると光線は平行移動する。
この性質を用いて標尺1目盛(1cm)の端数を読定することができる、すなわち、マイクロメータの役目をする。
光の屈折量はガラスの厚さとその屈折率および傾斜角により変わり、マイクロメータのドラム1回転で1cmになるように設定してある。
2)自動レベル
自動レベルは内蔵するコンペンセータ(自動補償装置)機構によって
望遠鏡の多少の傾きに関らず常に自動的に視準線を水平にすることができる器械である。
気泡管レベルの気泡管感度に相当するものがコンペンセータの性能である。
これに目盛読み取り精度を考慮して性能を区分している。読み取り装置は気泡管レベルと同様に平行平面鏡・マイクロメータを用いてい
る。
3)電子レベル
近年の電子技術の発達により、電子レベルが登場した。
電子レベルはコンペンセータと高解像能力の電子画像処理機能を有している。
基本的な原理は電子レベル専用標尺に刻まれたバーコードを観測者の目の代わりとなる検出器で認識し、電子画像処理をして電子レベル内
に入力されているパターンとの比較を行い、高さ及び距離を自動的に読み取るものである。
内蔵されている検出器は、メーカーによって可視光線に強く反応するものと赤外線に強く反応するものとがある。
電子レベルは水準測量作業用電卓(データコレクタ)、パソコン等に観測データ(ディジタルデータ)を自動入力することができるため、
各種作業に応用でき汎用性が高い。
<機器の検定等>
観測に使用する機器は、所定の検定を受けたものを使用し、適宜、点検調整するものとする。
点検調整は観測着手前に次の項目について行い、水準測量作業用電卓(データコレクタ)又は観測手簿に記録する。
ただし、1~2級水準測量では、観測期間中は10日ごとに点検調整を行うことを標準とする。
1)気泡管レベルは円形水準器および主水準器軸と視準線との平行性の点検調整
2)自動レベル、電子レベルは、円形水準器および視準線の点検調整並びにコンペンセータの点検
3)標尺付属水準器の点検
4)観測による視準線誤差の点検調整における読定単位および許容範囲は次表のとおりとする。
5)機器の検定有効期間は1年とする。ただし、標尺は3年とする。
<観測の実施>
観測は平均図に基づき、次に定めるところにより実施するものとする。
1)直接水準測量
・観測は、所定の方法により標尺目盛及びレベルと後視または前視標尺との距離を読定するものとする。
・観測は簡易水準測量を除き、往復観測とする。
・標尺は2本1組とし、往と復の観測において標尺を交換するものとし、測点数は偶数とする。
2)渡海(河)水準測量
観測は交互法、経緯儀法、俯仰ねじ法のいずれかにより行うものとする。
<運用基準>
1)観測値の記録は水準測量作業用電卓(データコレクタ)を用いる。
ただし、水準測量作業用電卓(データコレクタ)を用いない場合は、観測手簿に記載する。
2)新点の観測は永久標識の設置後24時間以上経過してから行う。
3)直接水準測量
①視準距離は等しく、かつ、レベルは出来る限り両標尺を結ぶ直線上に設置する。
②往復観測を行う水準測量において水準点間の測点数が多い場合は、適宜 固定点を設け、往および復の観測に共通して使用する。
③1級水準測量においては標尺の下方20cm以下を読定しない。
④視準距離および標尺目盛の読定単位は次表のとおりとする。
⑤1級水準測量においては観測の開始、終了、および固定点に到着ごとに温度を1℃単位で測定する。
⑥1日の観測は水準点で終わることを原則とする。
なお、止むを得ず固定点で終わる場合は、固定点の異常の有無を点検できるような方法で行う。
<再測>
1~4級水準測量の観測において、水準点および固定点によって区分された区間の往復観測値の較差が所定の許容範囲を超えた場合は、再測
しなければならない。
較差の許容範囲は次表のとおりとする。
<検測>
1~2級水準測量の場合は、使用した既知点の標高値が正常か否かを確認するため、その既知点とこれに隣接する既知点との間の路線につい
て検測を行う。
検測は往復観測を原則とし観測高低差との較差の許容範囲は次表のとおりとする。
(5)計算および計算の方法
計算とは新点の標高を求めるために必要な諸要素の計算(既知点の標高、観測値、補正値等を用いて行う補正計算および平均計算)を行
い、成果等を作成する一連の作業を計算という。
1)水準点の標高は観測値に対し、必要に応じて標尺補正、楕円補正および変動量補正を行い、平均計算を行って求める。
2)計算は所定の計算式により行うものとする。
3)計算は読定単位と同じ桁まで算出する。
4)標尺補正および楕円補正計算は1~2級水準測量について行う。
ただし、1級水準測量においては、楕円補正計算にかえて正標高補正計算を行うことができる。
また、2級水準測量における標尺補正計算は、高低差が70m以上の場合に行うものとし、補正量は15℃における標尺改正数を用いて計
算する。
5)変動量補正計算は地盤沈下調査を目的とする水準測量について、基準日を設けて行う。
6)渡海(河)水準測量の計算は、直接水準測量の区分で定められた読定単位と同じ桁まで算出する。
<点検計算および再測>
点検計算は観測の終了後に行い、許容範囲を超えた場合は再測を行うものとする。
1)すべての単位水準環(水準路線によって形成された水準環で、その内部に水準路線のないものをいう)及び次の条件により選定された全
ての点検路線について、環閉合差および既知点までの閉合差を計算し、観測値の良否を判定する。
・点検路線は既知点と既知点を結合させる。
・すべての既知点は少なくとも1つの点検路線で結合させる。
・すべての単位水準環は路線の一部を点検路線と重複させる。
2)点検計算の許容範囲は次表のとおりとする。
<平均計算>
平均計算は次に定めるところにより行うものとする。
1)直接水準測量の平均計算は距離の逆数を重量とし、観測方程式または条件方程式を用いて行うものとする。
2)直接水準測量と渡海(河)水準測量が混合する路線の平均計算は、標準偏差の二乗の逆数を重量とし、観測方程式または条件方程式によ
り行うものとする。
3)計算に使用するプログラムは所定の点検を受けたものとする。
平均計算による許容範囲は次表のとおりとする。
(6)成果等の整理
成果等は次のとおりとする。
1)観測成果表および平均成果表
2)成果数値データ
3)水準路線図
4)観測手簿
5)計算簿
6)点の記
7)建標承諾書
8)精度管理表
9)点検測量簿
10)平均図
11)測量標の地上写真
12)測量標設置位置通知書
13)基準点現況調査報告書
14)その他の資料